「うちの店もPR動画を作った方がいいのだろうか」。最近、飲食店の経営者からこの相談を受ける機会が増えました。写真での集客に限界を感じている、SNSの反応が鈍くなってきた、そういった声とセットで聞くことが多い相談です。
本記事では、なぜ今PR動画が必要なのか、実際にHPやSNSに掲載すると何が起きるのか、そして気になる費用相場までを、発注する側の視点でまとめます。
なぜ今、飲食店にPR動画が必要なのか
飲食店を探す行動は、この十年ほどで様変わりしました。食べログやぐるなびで「点数」を見て店を決めていた時代から、InstagramやTikTokで料理の動画を眺めながら店を探す時代に移っています。
総務省の情報通信白書によれば、X(旧Twitter)やInstagramは2024年時点で全世代の半数程度が利用しており、50代でも4割以上が利用者となるなど、若年層だけの話ではなくなっています。TikTokも10代・20代では利用率が半数を超え、YouTubeに至っては50代までの各世代で8割を超える利用率です。動画を見ながら消費行動を決める層は、もはや特定の若年層に限られていません。
写真は「一瞬」しか切り取れませんが、動画は湯気の立ち上る鍋や、肉が焼ける音、盛り付けの手元までを一続きの体験として見せられます。来店前の期待値を最も高めやすいのが動画である、という点は、これだけ映像プラットフォームの利用が広がった以上、当然の帰結と言えるでしょう。
もうひとつ見落とされがちな理由として、いまだに写真投稿のみで運用している飲食店が多いという事情があります。動画コンテンツで先に差をつけられる余地が、写真中心の運用を続ける店舗ほど残っているのです。
PR動画をHP・SNSに掲載すると何が起こるのか
動画を作ること自体が目的化してしまう店舗も少なくありませんが、本来見るべきは「公開後に何が変わるか」です。
新規の来店動機を作る
SNS上のリール・ショート動画は、フォロワーではないユーザーの「おすすめ」欄にも表示される設計になっています。これは、これまでチラシや看板でしか出会えなかった潜在層に、来店前の段階で店の魅力を届けられることを意味します。
写真1枚では伝わらない「どんな空気の店か」「どんな速さで料理が出てくるか」といった情報が、来店のハードルを下げる方向に働きます。
顧客自身の投稿(UGC)を誘発する
豪快な盛り付けや、卓上で仕上げる演出、思わず撮りたくなる内装を用意しておくと、来店客が自発的にスマートフォンを向け、SNSに投稿してくれるようになります。これがUGC(ユーザー生成コンテンツ)と呼ばれる現象です。
公式のPR動画は、この「撮りたくなる瞬間」を客に先回りして見せる見本の役割を果たします。広告費をかけずに拡散が生まれる仕組みを、動画が作っているとも言えます。
リピートと客単価に効いてくる
新規集客ばかりに目が向きがちですが、飲食店の経営を実際に支えているのは常連客であることが多いのが実情です。仕込みの様子やスタッフの人柄といった、来店しないと分からない「裏側」を動画で見せることは、初回来店の顧客に安心感と親近感を与え、再来店やLINE公式アカウントへの登録を後押しします。
採用の場面でも役に立つ
集客目的で作った動画は、求人応募者に対しても「どんな店で、どんな人たちと働くのか」を伝える材料になります。人手不足が続く飲食業界において、一本の動画が集客と採用の両方に効いてくるのは、投資対効果を考えるうえで無視できないポイントです。
動画を作るだけでは届かない、来店までの動線設計が必要な理由
ここまで動画の効果を説明してきましたが、実務でつまずく飲食店の多くは「良い動画を作ったのに、来店に結びつかない」という壁にぶつかります。原因の大半は、動画そのものの質ではなく、動画を見た人が次に何をすればいいか分からない、という導線の欠落にあります。
動画は「入口」であって「ゴール」ではない
マーケティングの基本的な考え方に当てはめると、飲食店の集客プロセスは、SNSで店の存在に気づく「認知」、動画を見て興味を持つ「興味・関心」、プロフィールや口コミを確認する「比較・検討」、実際に来店・予約する「来店」、そして再来店する「リピート」という段階を踏みます。
PR動画が担えるのは、このうち「認知」と「興味・関心」までです。ここから先、比較検討している見込み客を実際の来店にまで運ぶ仕組みがなければ、どれだけ再生数が伸びても売上には反映されません。
動画から来店・予約までをつなぐ具体的な導線
動画を公開したら終わりではなく、視聴者が迷わず次の行動に移れる設計が必要です。具体的には、プロフィール欄に予約リンクやGoogleマップへの導線を常設しておく、動画のキャプションに「ハイライト保存」を促す一文を添えて後から見返せるようにする、動画内に営業時間や最寄り駅などの実用情報をテロップで入れておく、といった工夫が挙げられます。
動画のクオリティを上げることと同じくらい、「見た人がどこをタップすれば来店に近づくか」を設計することが、費用対効果を左右します。
効果測定は再生数だけでは不十分
動画の成果を再生数だけで判断してしまうと、動線の課題に気づけません。再生された回数に対してプロフィールへ遷移した割合、保存された割合、予約サイトへのクリック数といった、来店に近い行動の数値まで追うことで、どの段階で見込み客が離脱しているのかが見えてきます。動画の企画を見直すべきなのか、導線の設計を見直すべきなのかは、この計測をして初めて判断できます。
飲食店のPR動画にかかる費用相場
必要性と効果、そして動線設計の重要性を踏まえたうえで、費用の話に移ります。あらかじめお伝えしておくと、動画制作の価格帯を示す公的な統計は存在しません。以下は制作会社各社が公開している見積もり事例をもとにした、あくまで目安です。

数万円から着手できる短尺のリール素材で反応を見ながら、効果の出た企画に予算を寄せていくという進め方は、初めて動画に取り組む店舗にとって現実的な選択肢です。逆にHPのトップに常設する看板動画は、撮影の準備や演出が増える分、単価も上がります。
「どこに載せるための、何秒の動画か」、そして「動線設計まで含めた費用なのか」を先に決めてから見積もりを取ることが、想定外の高額請求や「作っただけ」の失敗を避ける一番の近道です。
PR動画の費用を抑えつつ効果を落とさない工夫
予算に制約がある場合は、企画やキャスティングを自社で担い、撮影・編集のみを外部に依頼する方法や、複数本をまとめて発注してディレクション費用をならす方法が現実的です。また、動画制作費の一部は小規模事業者持続化補助金の「ウェブサイト関連費」として補助対象になる場合があります。
ただし、この区分だけを単独で申請することはできず、他の販路開拓施策と組み合わせた事業計画が必要になる制度設計です。活用を検討する場合は、公式サイトの最新の公募要領を確認したうえで、早めに地域の商工会議所へ相談することをおすすめします。
公開前に確認しておきたい法律のポイント
演出に力を入れるあまり、表現が事実と食い違ってしまうケースには注意が必要です。実際とは異なる食材の見せ方(例:成形肉を一枚肉のように撮影する)は景品表示法の優良誤認表示にあたり、インフルエンサーに無償で依頼したにもかかわらず「PR」の表記を入れずに投稿させる行為は、2023年10月に施行されたステルスマーケティング規制の対象になります。
消費者庁の運用基準では、「広告」「PR」「プロモーション」などの表記があれば消費者が広告と判別できる例とされています。公開前に、演出と事実表示の境目を制作会社と一緒に確認する工程を挟んでおくと安心です。
PR動画制作の流れ

横浜を拠点とするクリエイティブプロダクション、株式会社um.では、飲食店の集客を目的としたPR動画の企画・撮影・編集に加え、公開後に来店へつなげる導線設計まで一貫してサポートしています。
飲食店のPR動画制作は株式会社um.へご相談ください
「何を撮ればいいか決まっていない」という段階からのご相談も歓迎です。目的と予算に合わせた動画プランをご提案しますので、お気軽にお問い合わせください。
出典
- 総務省「令和7年版情報通信白書」コミュニケーションツール・SNS https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111120.html
- 総務省「令和7年版情報通信白書」動画共有・配信サービス https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r07/html/nd111130.html
- 小規模事業者持続化補助金〈一般型〉公式サイト(日本商工会議所) https://r1.jizokukahojokin.info/
- 「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の指定について(消費者庁) https://www.caa.go.jp/notice/entry/032672/
