「求人を出しても応募が来ない」。多くの建設会社に共通する悩みです。
求人票には仕事内容も給与も休日もきちんと書いてある。それでも若い人から連絡が来ないのは、条件が悪いからとは限りません。どんな現場で、どんな先輩と、どんな1日を過ごすのか。そこが文字だけでは伝わらないからです。
国土交通省の資料に載った調査では、社員5〜100名の工事会社の3社に1社がホームページを持っていませんでした(出典1)。会社の姿が外から見えなければ、若い人は応募をためらいます。家を建てたい施主や、協力会社を探している元請けも同じです。よく知らない会社には、なかなか声をかけられません。
そこで役に立つのが動画です。この記事では、建設会社が動画をつくると採用と受注の両面で何が変わるのかを、具体例を交えて紹介します。採用動画や施工事例動画のつくり方、見せる場所、費用の目安、制作会社を選ぶときの注意点まで順番に解説します。

建設会社が動画制作をするメリット
動画をつくると、会社の「見えなかった部分」が見えるようになります。その結果、採用と受注の両方にいい変化が出てきます。ここでは代表的なメリットを3つ紹介します。

現場の仕事を見せることで、若手がすぐ辞めにくくなる
せっかく採用した若手が、数年で辞めてしまう。これも建設会社でよく聞く悩みです。
厚生労働省の調べでは、高校を卒業して建設業に就職した人のうち、3年以内に辞めた人は41.4%でした。
全産業の平均37.9%より高い数字です(出典2)。
辞める理由として多いのが、「思っていた仕事と違った」というズレです。朝は何時に集合するのか。夏の現場はどれくらい暑いのか。先輩はどんな雰囲気なのか。入社前にこうしたことを知っていれば、ズレはぐっと小さくなります。
国交省が工業高校生に行った調査にも、面白い結果があります。建設業に触れたことがない生徒ほど「危険」「汚い」という印象を持ち、現場に触れたことがある生徒は「ものをつくる」「後世に残る」といった魅力を感じていました(出典1)。
実際に見たことがあるかどうかで、イメージは大きく変わるということです。動画を使えば、その「見る機会」を何百人にも届けられます。
施主や元請けに「この会社なら任せられる」と思ってもらえる
家を建てる人は、どうやって工事会社を探しているのでしょうか。
国交省の令和7年度の調査では、注文住宅を建てた人の探し方で最も多かったのが「インターネット」と「住宅展示場」で、どちらも45.8%でした(出典3)。4年前はインターネットが27.5%だったので、ネットで探す人が大きく増えています(出典3)。

同じ調査で、依頼先を選んだ理由の1位は「信頼できる会社だったから」でした(出典3)。
施主がネットで知りたいのは、値段よりもまず「信頼できるかどうか」です。
職人が丁寧に作業している姿や、担当者が話している様子を動画で見せれば、文字と写真だけのホームページよりずっと安心してもらえます。
1回の撮影で、採用にも営業にもSNSにも使える
現場での撮影は、工程の調整がいちばん大変です。だからこそ、1回の撮影でいろいろな素材をまとめて撮っておくのがおすすめです。
たとえば同じ撮影日に、若手社員のインタビュー、職人の作業風景、完成した建物をまとめて撮っておきます。そこから「3分の採用動画」「会社紹介動画」「SNS用の短い動画」を切り出せば、1本あたりの費用を大きく下げられます。
【図:1回の撮影から生まれる動画(前回作成の図版を使用)】
建設業の採用動画の作り方と活用方法
採用動画でよくある失敗は、会社の歴史や社長のあいさつから始めてしまうことです。見る側がいちばん知りたいのは「この会社に入ったら、毎日どんな仕事をするのか」。そこを中心に組み立てます。
建設業の採用動画は「若手社員の1日」を追いかける
おすすめは、入社2〜3年目の若手社員1人に密着する構成です。
まず最初の15秒で、重機が動く場面や完成した建物など、思わず見たくなる映像を流します。続いて、出勤、朝礼、作業、お昼休み、片付けと、1日の流れを順番に見せていきます。後半は本人のインタビューと先輩からの一言。最後に応募方法や現場見学会の案内を入れて終わります。

インタビューは、台本を読ませないほうがうまくいきます。
国交省の事例集に載っている衣川建設は、TikTokで求人の発信をしています。最初は原稿を見ながら撮っていましたが、自分の言葉で話したほうが見る人に響くとわかり、今は原稿なしの一発撮りにしているそうです(出典4)。
「入社前に不安だったことは?」「最初にできるようになった作業は?」といった答えやすい質問をいくつか用意しておけば十分です。
高校生だけでなく、保護者と学校の先生にも届ける
高校生の就職では、本人と同じくらい保護者や先生の意見が大きく影響します。国交省も、保護者や先生に建設業を知ってもらうことが大切だとしています(出典4)。
長野県建設業協会が高校の先生向けに開いた研修では、参加した先生から「建設業で働く人の1日の流れを知りたかった」という声が出ました(出典4)。先生自身も、建設業の仕事をよく知らないのです。
保護者が気にするのは、休みはきちんと取れるのか、給料はどう決まるのか、資格は取らせてもらえるのか、安全対策は大丈夫か、といったことです。こうした点を動画で具体的に見せると、安心して子どもを送り出してもらえます。高校訪問や会社説明会で、タブレットを使って2〜3分の動画を見せるだけでも効果があります。
採用動画はYouTube・TikTok・採用サイトで見せる
若い人は、ふだんどこで動画を見ているのでしょうか。
総務省の調査では、YouTubeを使っている人は10代で95.0%、20代で96.3%でした。TikTokも10代の67.9%が使っています(出典5)。
基本の使い方は、長めの本編をYouTubeに載せて採用サイトに貼り、短く切り出した動画をTikTokやInstagramに投稿する形です。
先ほどの衣川建設は、毎月10本の動画を撮り、3日に1回のペースで投稿しています。始めて1か月で30人ほどから問い合わせがあり、半年で20代の若手を10人ほど採用できたそうです(出典4)。
動画は1本つくって終わりではありません。投稿を続けることで、応募の入り口として働き続けてくれます。
施工事例動画・会社紹介動画で依頼を増やす活用方法
受注につなげる動画は、誰に見せるかで中身を変えるのがコツです。個人の施主には「安心感」を、元請けや発注者には「きちんと施工できる体制」を伝えます。
施工事例動画は「完成までの過程」を見せる
完成した建物の写真は、どの会社のホームページにも載っています。差がつくのは、完成までの過程です。
基礎工事から完成までを、定点カメラで少しずつ撮りためて数十秒の早送り映像にする。完成すると見えなくなる鉄筋や防水の部分を、丁寧に映しておく。最後に施主に「住み心地はどうですか」と話してもらう。こうすると、技術と人柄の両方が伝わります。
リフォームなら、工事前と工事後を並べるだけでも十分に伝わります。施主に出演してもらうときや家の中を映すときは、どこで公開するのかまで説明し、事前に了解をもらっておきましょう。
元請け・発注者向けの会社紹介動画は「現場の管理」を見せる

ゼネコンや役所の担当者が知りたいのは、どんな重機を持っているか、どんな工事が得意か、資格を持った人が何人いるか、安全管理をどうしているかです。
毎朝の朝礼や、作業前に危ない点を確認し合う様子、きれいに片付いた資材置き場。こうした映像は、言葉で説明するより早く「きちんとした会社だ」と伝えてくれます。営業先で見せたり、協力会社募集のページに載せたりと、使える場面はたくさんあります。
ICT施工や技術の継承にも動画は役立つ
ドローン測量や3Dデータを使った工事をしているなら、それ自体が若い人を引きつける材料になります。国交省の資料には、BIMに興味を持った学生がネットで調べて会社を見つけ、県外から入社してくれたという企業の声が紹介されています(出典1)。
社内向けにも、動画は使えます。国交省の資料によると、建設業で働く人の36.6%が55歳以上で、29歳以下は11.9%しかいません(出典1)。
ベテランが引退する前に、型枠の組み方や重機の点検手順を動画に残しておけば、新人教育の大きな助けになります。
工事現場の囲いにQRコードを貼って、工事の様子や求人ページを見てもらうのもおすすめです。近所の人に会社を知ってもらう、手軽な方法です。
建設会社の動画制作にかかる費用の目安
動画の費用は、「何本つくるか」と「何日撮影するか」でほぼ決まります。実際に自治体や業界団体が発注した金額を見ると、目安がつかみやすくなります。
費用が変わるのは撮影日数・本数・ドローンの有無
見積りの大半は人件費です。企画、撮影スタッフの人数と日数、編集、ナレーションや字幕、ドローン撮影の有無で金額が変わります。
建設現場は工程や天気に左右されるため、撮影が何日かに分かれることもよくあります。見積りを比べるときは、合計金額だけでなく「撮影は何日分か」「修正は何回までか」も確認しておくと安心です。
自治体・業界団体が動画制作にかけた金額
岐阜県が2026年度に募集した「かっこいい建設業ショート動画制作業務委託」は、上限が税込147万1,959円でした。中高生と保護者向けの短い動画をつくり、広め方の提案までを含めた金額です(出典6)。
山形県建設業協会が中学校の授業用につくったドラマは、1本約300万円、完成まで約7か月かかっています(出典4)。
ドラマのように出演者や撮影場所が多い動画は、費用が高くなります。1社の採用動画なら、撮影日を絞って社員インタビューと現場の様子を中心にすれば、ぐっと抑えられます。
助成金が使えるかも確認しておく
厚生労働省には、建設業で若い人や女性を採用・定着させる取り組みを支援する助成金があります(出典7)。国交省の資料では、中小の建設会社なら対象経費の5分の3、1年度あたり最大200万円までと紹介されています(出典4)。
ただし、制度の中身は毎年のように見直されます。動画の制作費が対象になるかも含めて、計画の段階で地域の労働局に確認してください。
失敗しない建設会社向け動画制作会社の選び方と注意点
映像がきれいかどうかだけで制作会社を選ぶと、撮影当日や公開後に困ることがあります。建設会社ならではの注意点を4つ紹介します。
建設現場のルールを守って撮影できるか

現場に入る撮影スタッフも、作業員と同じルールを守る必要があります。ヘルメットや安全帯などの保護具、立ち入り禁止の場所、重機の動く範囲。こうした基本を知らない制作会社だと、現場監督がつきっきりで対応することになり、工事にも影響が出ます。
映像の中で、誰かのヘルメットのあご紐が外れていただけでも、「安全意識の低い会社」に見えてしまいます。建設現場で撮影した経験があるかどうかは、最初の打ち合わせで必ず聞いておきましょう。
ドローン撮影は国の許可と保険を確認する
ドローンで上空から撮った映像は迫力があり、建設会社の動画の見せ場になります。ただし、飛ばし方には法律のルールがあります。
住宅が密集した地域の上空を飛ばす場合や、人や建物から30m以上離れられない場合などは、原則として国土交通大臣の許可や承認が必要です(出典8)。住宅地の現場では、これに当てはまることが多くあります。制作会社が許可を取っているか、保険に入っているかを、撮影前に確認しておきましょう。
著作権と使い道、出演者の扱いを契約で決めておく
完成した動画を、あとで自社で短く編集してSNSに使いたい。こうしたケースは多いのですが、契約で決めておかないとトラブルになることがあります。「著作権はすべて譲渡する」と書くだけでは、編集し直す権利は含まれないとみなされるおそれがあるため、再編集してよいことも契約書にはっきり書いておきましょう。契約の基本は、文化庁が公開しているマニュアルでも確認できます(出典9)。
もう一つ見落としやすいのが、出演した社員が退職したときの扱いです。採用動画に出ている先輩がもういない、という状態は応募者によい印象を与えません。公開する期間や、動画を差し替えるときの条件も事前に決めておくと安心です。
公開後の運用まで相談できるか
動画は、公開してからが本番です。
再生回数だけでなく、採用サイトを見に来た人の数、応募の数、問い合わせの数がどう変わったかを確認します。反応がよかった場面は、短く切り出してSNSに投稿し直します。こうした運用まで一緒に考えてくれる制作会社なら、1本目の動画をしっかり活かせます。
月に何本撮るか、社内の誰が投稿するかといった体制づくりまで相談に乗ってくれるかも、比べるときの大切なポイントです。
建設会社の動画制作・動画マーケティングの相談は株式会社um.へ
採用でも受注でも、建設会社の動画でいちばん大切なのは「現場をありのまま、わかりやすく見せること」です。そのためには、誰に何を伝えたいかを決め、工事の予定に合わせて撮影し、公開後も発信を続けることが欠かせません。
株式会社um.は、横浜を拠点とするクリエイティブプロダクションです。企画から撮影、編集、SNSでの発信まで、まとめてお手伝いしています。若手社員の1日を追う採用動画、工事の始まりから完成までを記録する施工事例動画、元請けや発注者に向けた会社紹介動画など、目的とご予算に合わせてご提案します。工事の予定に合わせた撮影日の調整や、1回の撮影から複数の動画をつくる進め方もご相談ください。
「何本つくればいいのかわからない」「まずは費用感だけ知りたい」という段階でも大丈夫です。建設会社の動画制作や動画マーケティングのご相談は、株式会社um.までお気軽にお問い合わせください。
出典
- 国土交通省 不動産・建設経済局「参考資料集」(令和8年4月3日) https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001994097.pdf
- 厚生労働省「新規高卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」別紙2 https://www.mhlw.go.jp/content/11805001/001318972.pdf
- 国土交通省 住宅局「令和7年度 住宅市場動向調査 報告書」(令和8年7月) https://www.mlit.go.jp/report/press/content/002012180.pdf
- 国土交通省 不動産・建設経済局 建設振興課/建設産業人材確保・育成推進協議会「建設産業×広報 事例集」 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001873276.pdf
- 総務省 情報通信政策研究所「令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)」(令和8年6月) https://www.soumu.go.jp/main_content/001079136.pdf
- 岐阜県「かっこいい建設業ショート動画制作業務委託プロポーザル募集」 https://www.pref.gifu.lg.jp/bid/bid/500858.html
- 厚生労働省「人材確保等支援助成金のご案内」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_07843.html
- 国土交通省「無人航空機 飛行許可・承認申請ポータルサイト」 https://www.mlit.go.jp/koku/permitapproval/index.html
- 文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」 https://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_manual/1_1_1.html
