MV制作の相場と制作費の内訳|企業がMV撮影を依頼する前に知っておきたい費用・流れ・権利

所属アーティストの新曲や、自社のブランドソング、周年記念の楽曲。MV制作を任された担当者がまず悩むのは、「いくら用意すればいいのか」ではないでしょうか。制作会社に見積もりを取ると会社ごとに金額が大きく違い、どれが妥当なのか判断できない。社内で予算を通すにも、金額の根拠を説明しなければなりません。

MV制作の相場に幅があるのは、スタッフの人数や撮影日数、ロケ地、納品物といった条件が会社ごとにまったく違うためです。逆にいえば、何にお金がかかるのかが分かれば、見積もりを比べることも、社内に説明することもできるようになります。

この記事では、MV制作の相場の見方と制作費の内訳、制作会社の選び方、MV撮影の流れに加え、ロケの許可や権利の扱いなど、企業が依頼前に押さえておきたい点をまとめました。

MV制作の相場が見積もりごとに大きく違う理由

同じ曲のMVでも、制作会社によって見積もりの金額は大きく変わります。金額だけで高い・安いを判断せず、まずはMV制作の相場を左右する条件を押さえておきましょう。

MV制作費が上がる条件・抑えられる条件(スタッフの人数、撮影日数・場所、出演者、機材、納品物の違いによる比較)

MV制作の相場はスタッフの人数と撮影日数で決まる

MV制作費のうち、もっとも大きな割合を占めるのが人件費です。監督が1人でカメラを回して編集まで担当する場合と、監督、カメラマン、照明、ヘアメイク、スタイリストがそろう場合とでは、同じ1日の撮影でも費用は何倍にも変わります。

撮影日数も同じです。スタジオでの演奏シーンを半日で撮り終えるのか、複数のロケ地を回って2日、3日かけるのかで、人件費と機材費はそのまま積み上がります。見積もりを受け取ったら、合計金額より先に「何人が何日動く計算になっているか」を確認してください。金額の差の理由は、たいていここにあります。

MV制作の相場を比べるときは表現手法と納品物をそろえる

MVには、アーティストが出演する実写のMVのほか、アニメーションのMV、歌詞の文字を動かして見せるリリックビデオなどがあります。作り方が違えば必要なスタッフも作業も別物なので、実写の見積もりとリリックビデオの見積もりを並べても比較になりません。

複数の会社に見積もりを頼むときは、実写かアニメーションか、出演者は誰か、ロケかスタジオか、納品する映像は何本か、といった条件をそろえて伝えましょう。条件が同じであれば、金額の違いを会社ごとの体制や提案内容の違いとして比べられます。

MV制作の予算は公開する場所に合わせて配分する

YouTube用の横型のMVだけを作るのか、SNS用の縦型の映像まで作るのかでも、必要な予算は変わります。日本レコード協会の「2025年度音楽メディアユーザー実態調査」では、音楽を楽しむために使ったサービスとしてYouTube(ショートを含む)を挙げた人が60.4%でした。一方で、12〜19歳の女性ではTikTokを挙げた人が32.4%にのぼり、若い層ほどSNSで音楽に触れている傾向があります。

届けたい相手が10代なら縦型の映像に予算を回し、幅広い世代に届けたいならYouTube用の本編にしっかりお金をかける。公開する場所を先に決めておくと、限られた予算の使い道がはっきりします。

MV制作費の内訳|見積書で確認したい5つの項目

MV制作の見積書には、いくつもの項目が並びます。それぞれが何の費用なのかが分かれば、どこにお金をかけてどこを削るかを自社で判断できますし、社内で予算を説明するときの根拠にもなります。

MV制作費の内訳(企画・演出費、撮影費、ロケ地・スタジオ費、出演・美術費、編集・仕上げ費の5つの要素)

企画・演出費はMV制作の仕上がりを左右する

企画・演出費は、曲を聴き込んで映像のコンセプトを考え、絵コンテや撮影の構成を作るための費用です。監督の経験や実績によって金額は変わります。

企画をしっかり詰めておくと現場で迷う時間が減り、撮影日数を抑えられることもあります。企画・演出費を削った結果、撮影が長引いて全体の費用が増えることもあります。

MV撮影の人件費と機材費は「人数×日数」で積み上がる

MV撮影の費用には、カメラマンや照明などのスタッフの人件費と、カメラ、レンズ、照明などの機材費が含まれます。映画のような質感を出したいならシネマカメラや特殊なレンズを、動きのある映像を撮りたいならジンバルやクレーンを使うため、機材と扱うスタッフの分だけ費用が増えます。

演奏シーン中心のシンプルな構成であれば、カメラの台数を絞って撮影費を抑えられます。反対に、ダンスのように全身の動きを見せるMVでは、引きの映像と寄りの映像を同時に撮るため、カメラを複数台用意することもあります。

ロケ地・スタジオ・出演者にかかるMV制作費

スタジオを借りれば使用料が、屋外で撮影すれば自治体の撮影使用料や許可申請の手数料がかかることがあります。遠方なら交通費や宿泊費も加わります。

アーティスト以外に俳優やダンサー、モデルが出演する場合は、その出演料のほか、ヘアメイクや衣装、小道具の費用もかかります。ストーリー仕立てのMVほど、この項目の金額が大きくなります。

編集費と納品物の数でMV制作費は変わる

編集では、曲のリズムに合わせて映像をつなぎ、カラーグレーディングで色味を整えます。CGや合成を入れる場合は、その作業費も加わります。

YouTube用の本編に加えて、SNS用の縦型映像や15秒・30秒の告知映像を作る場合は、その分の編集費がかかります。縦型の映像は撮影の段階から構図を考えておく必要があるため、納品物は最初の相談の時点で伝えておきましょう。

見積書に入っていないMV制作費も確認しておく

見積書に入っているか確認したい費用(修正回数を超えたときの料金、撮影の延長料金、ロケ地の使用料・交通費、撮影素材の二次利用料)

社内で予算を通した後に追加費用が出ると、担当者は説明に困ります。見積もりの段階で、修正回数の上限を超えた場合の料金、撮影が延びたときの延長料金、ロケ地の使用料や交通費が含まれているかどうかを確認しておきましょう。

撮影素材を別の映像に使う場合の追加料金も見落としやすい点です。「見積もりに含まれていない費用は何か」を一度聞いておくだけで、予算オーバーはかなり防げます。

MV制作会社の選び方|企業が依頼先を比べる3つのポイント

MVを撮れる依頼先は、映像制作会社から個人の映像クリエイターまでさまざまです。料金だけで選ぶと「イメージと違う映像になった」ということにもなりかねません。企業が依頼先を比べるときは、次の3点を確認しましょう。

MV制作会社を選ぶ3つのポイント(自社の楽曲に近い実績があるか、見積もりを項目ごとに出してくれるか、許可申請や権利の確認まで任せられるか)

自社の楽曲に近いMV撮影の実績があるか

バンドの演奏を見せるMV、ダンスを見せるMV、ストーリーで見せるMVでは、求められる撮影の技術が違います。たとえばダンスのMVでは、振付の見せ場を知っているかどうかで、カメラを動かすタイミングや構図が大きく変わります。

実績を見るときは、本数の多さより、自社の楽曲に近いジャンルのMVがあるかを確認しましょう。気になる作品の制作体制や撮影日数を聞くと、自社の案件の規模感もつかめます。

MV制作の見積もりを項目ごとに出してくれるか

「MV制作一式」とだけ書かれた見積もりでは、何にいくらかかっているのかが分からず、社内での説明にも使えません。企画・演出費、撮影費、編集費などの項目ごとに金額を出してくれる会社なら、他社との比較もしやすくなります。

予算の上限を伝えたうえで、「この予算ならここまでできる」という提案をしてくれるかどうかも、依頼先を選ぶうえでの判断材料になります。

MV撮影の許可申請や権利の確認まで任せられるか

屋外でMV撮影をする場合は、道路や公園などの使用許可が必要になることがあります。こうした申請を制作会社が進めてくれるのか、自社で行う必要があるのかで、担当者の負担は大きく変わります。完成したMVの権利の扱いを契約前に説明してくれるかも確認しましょう。

MV撮影の流れ|依頼から公開までのスケジュール

MV制作は、撮影当日よりも前の準備に多くの時間を使います。リリース日や公開日が決まっている場合は、そこから逆算してスケジュールを組むことが大切です。依頼から公開までの流れを図にまとめました。

MV制作の依頼から公開までの流れ(相談・見積もりから企画、ロケハン、撮影、編集、社内確認を経て納品・公開に至る7つのステップ)

MV撮影の相談では目的と公開日、予算の上限を伝える

制作会社に最初に相談するときは、MVを作る目的、公開したい日、予算の上限、公開する場所、参考にしたいMVを伝えると話が早く進みます。音源が完成していなくても、デモ音源があれば企画は進められます。

予算の上限は伏せずに伝えたほうが、制作会社は予算内でできる内容を具体的に提案できます。見積もりのやり直しも減り、スケジュールに余裕が生まれます。

MV撮影までの準備期間はロケの許可申請も見込んで組む

企画が決まると、ロケ地の下見や出演者・スタッフの手配、ロケ地の許可申請に進みます。屋外での撮影は、後で紹介するように許可の申請に一定の期間がかかるため、早めの相談がそのままスケジュールの余裕になります。

雨の日に延期するのか、屋内のシーンに切り替えるのか、予備日の扱いも撮影前に決めておきましょう。

MV撮影後の確認は社内の承認ルートを決めておく

企業の案件では、担当者のほかにアーティスト本人や事務所、上司など、編集した映像の確認に関わる人が多くなりがちです。

誰がどの順番で確認し、最終的に誰が承認するのかを先に決めておくと、修正のやり取りがスムーズになります。修正回数に上限がある場合は、関係者の意見をまとめてから制作会社に伝えましょう。

MV撮影をロケで行うときに必要な許可と費用

街なかや公園でのMV撮影には、事前の許可が必要になる場面が多くあります。企業の名前で公開する映像だからこそ、許可のない撮影でトラブルになることは避けなければなりません。主な手続きと申請の目安をまとめました。ロケ地の候補探しや施設との調整は、各地のフィルムコミッション(ロケ撮影を支援する自治体などの窓口)にも相談できます。

MV撮影のロケで必要な許可と申請の目安(道路、公園、ドローン、ロケ地探しにおける事前確認や手続きのポイント)

道路でのMV撮影は警察署の道路使用許可が必要になる

道路上で撮影する場合は、撮影場所を管轄する警察署の道路使用許可が必要になることがあります。東京都がまとめたロケ撮影の遵守事項でも、道路上での撮影には所轄の警察署の許可が必要とされています。警視庁では、工事・作業以外の道路使用許可の審査手数料を2,100円としています。

警察庁は、ロケ撮影の道路使用許可について事前相談に応じており、時間に余裕をもって相談することが大切だとしています。撮影場所が決まったら早めに相談しましょう。

公園でのMV撮影は自治体の許可と撮影料がかかる

公園での撮影には、公園を管理する自治体の許可が必要です。たとえば横浜市の都心部公園担当が管理する公園では、商業目的の動画撮影の撮影行為使用料を30,000円としています。電話で空き状況を確認できるのは問い合わせた日の1週間後から2か月先までで、山下公園では7時から21時の間の連続した3時間以内という時間の制限もあります。

同じ案内では、ドローンを使う撮影、大きな音を出す撮影、レールやクレーンなど多くの機材を持ち込む撮影は許可できないとされています。曲を流しながら演奏シーンを撮る場合などは、公園でのロケが難しいこともあります。

ドローンを使ったMV撮影は国土交通省の許可が必要になる場合がある

国土交通省は、人口集中地区の上空や空港の周辺、150m以上の上空などでドローンを飛ばす場合は、国土交通大臣の許可が必要だとしています。申請は、飛行を始める予定日の少なくとも10開庁日前までに行う必要があります。

都市部の多くは人口集中地区にあたるため、空撮を希望する場合は、許可を取って飛ばせる撮影チームかを依頼前に確認しましょう。

MV制作の契約で企業が確認したい権利と発注のルール

MVは、公開した後も広告やイベント、SNSなどでくり返し使われることがあります。完成してから「この使い方はできない」と分かることがないよう、契約の前に権利と発注のルールを確認しておきましょう。

MV制作の契約で決めておきたいこと(著作権の所在、映像の二次利用範囲、使わなかった素材の利用可否、出演者の同意範囲)

MV制作の著作権と二次利用の範囲を契約書で決める

MVは著作権法上、映画の著作物として扱われます。映画の著作物の著作権は、製作に発意と責任を持つ「映画製作者」に、一定の条件のもとで帰属すると定められています。ただ、依頼して作るMVでは、依頼した企業と制作会社のどちらが映画製作者にあたるのかがはっきりしない場合もあります。

そのため、完成したMVの著作権がどちらにあるのか、MVの映像をCMや店頭のモニター、展示会、SNSの広告などに使ってよいのか、撮影素材を別の映像に使えるのかを、契約書で具体的に決めておくことが大切です。

MV撮影の出演者には映像の使い道を伝えて同意を得る

アーティスト以外にダンサーや俳優、モデルが出演する場合は、MVがどこで公開され、どんな用途に使われるのかを事前に伝えて同意を得ておきましょう。著作権法では、演じたり踊ったりする人にも「実演家」としての権利が認められています。MVの映像を広告にも使う予定があるなら、その点も出演の条件に含めておきましょう。

個人クリエイターへのMV制作の依頼はフリーランス法を確認する

企業が、従業員のいない個人の映像クリエイターにMV制作を依頼する場合は、2024年11月に施行されたフリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の対象になることがあります。発注する側は、業務の内容や報酬の額、支払期日などの取引条件を、直ちに書面やメールなどで示さなければなりません。報酬の支払期日は、納品を受けた日から60日以内のできる限り短い期間で決める必要があります。

海外向けのMV制作費は国の補助金を使える場合がある

海外のファンに向けたMVを作る場合は、国の補助金も選択肢になります。経済産業省の「IP360補助金」(令和7年度補正 コンテンツ産業成長投資支援事業費補助金)のうち新規IP企画支援事業では、音楽分野で海外向けMVの製作が支援の対象です。企画から撮影、編集、プロモーションまでの費用が対象で、補助率は2分の1、音楽分野の上限額は7,000万円とされています。対象は法人に限られ、公募の期間も決まっているため、経済産業省の最新の公募情報を確認してください。

MV撮影・舞台撮影のご相談は株式会社um.へお問い合わせください

株式会社um.は、横浜を拠点に映像制作を行っている会社です。バレエ発表会やダンスイベントをはじめ、数多くの舞台を撮影してきました。

踊りを知るカメラマンがMV撮影・舞台撮影を担当します

um.の舞台撮影は、バレエ・ダンスのプロとして舞台に立ってきたカメラマンが担当します。振付の流れや音楽から次の見せ場を読み、構図を準備できるのは、自ら踊ってきた経験があるからです。つま先まで含めた全身の美しさや、一瞬で終わるジャンプの頂点を逃さない撮り方は、ダンスシーンのあるMVでも力を発揮します。

MV撮影・舞台撮影の費用はお問い合わせ時にご案内します

撮影費用は、撮影の規模や日数、編集の内容によって異なるため、ご相談の内容に合わせて個別にご案内しています。「まだ曲と公開日しか決まっていない」「この予算でどこまでできるか知りたい」といった段階のご相談も歓迎です。舞台撮影やダンスMVの撮影は、株式会社um.へお気軽にお問い合わせください。


出典

  • 一般社団法人日本レコード協会「2025年度 音楽メディアユーザー実態調査 報告書(公表版)」 https://adm.riaj.or.jp/sites/default/files/2026-07/softuser2025.pdf
  • 警察庁「ロケ撮影に伴う道路使用許可申請について」 https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/shinsei-todokede/dourosiyoukyoka/location.html
  • 警視庁「道路使用許可」 https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/tetsuzuki/kotsu/road_permission.html
  • 東京都(東京ロケーションボックス)「ロケ撮影の際の遵守事項」 https://www.locationbox.metro.tokyo.lg.jp/Portals/0/resources/pdf/ロケ撮影の際の遵守事項.pdf
  • 横浜市「横浜市都心部公園担当所管公園の撮影手続きについて」 https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/koen/satsuei/toshinbu.html
  • 国土交通省「無人航空機の飛行禁止空域と飛行の方法」 https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html
  • 国土交通省「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール(リーフレット)」 https://www.mlit.go.jp/common/001303822.pdf
  • e-Gov法令検索「著作権法」 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000048
  • 公正取引委員会「2026年公正取引委員会フリーランス法特設サイト」 https://www.jftc.go.jp/freelancelaw_2026/index.html
  • 経済産業省「コンテンツ産業」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/index.html
  • 経済産業省「令和7年度補正 コンテンツ産業成長投資支援事業費補助金 新規IP企画支援事業 補足資料」 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/2026/0331/260421_document_menu2.pdf