研修動画の動画制作費用と外注のポイント5選|自治体の発注データで見る相場と依頼時の注意点

「新人が入るたびに同じ説明をしている」「教える側の手が回らず、OJTが現場任せになっている」。こうした悩みを持つ企業で、よく検討されるのが研修動画です。一度作れば同じ内容を何度でも伝えられますが、制作会社に頼むといくらかかるのか、どこまで任せればいいのか、迷う担当者の方も多いと思います。

この記事では、厚生労働省「能力開発基本調査」の最新結果と、京都市・横浜市が実際に発注した研修動画の金額をもとに、研修動画の制作費用の相場と外注のポイントをまとめました。後半では、2026年10月に義務化されたカスタマーハラスメント対策など、今のうちに研修動画にしておきたいテーマも紹介します。

研修動画の動画制作が企業に広がっている理由

まずは、企業の人材育成が今どんな状況にあるのかを見ていきましょう。国の調査からは、教える人も時間も足りていない現場の様子が見えてきます。

研修動画が求められる背景|「指導する人材が足りない」事業所は約6割

厚生労働省が2026年7月に公表した令和7年度「能力開発基本調査」は、従業員30人以上の企業7,452社、事業所7,194か所、そこで働く20,127人を対象にした調査です。人材育成に何らかの問題があると答えた事業所は80.1%にのぼりました。

問題の中身を見ると、最も多いのが「指導する人材が不足している」で59.5%。次いで「人材を育成しても辞めてしまう」が51.6%、「人材育成を行う時間がない」が45.5%でした。

人材育成に関する問題点を示すグラフ

教える人が足りず、教える時間もない。この2つの悩みに、研修動画は向いています。ベテラン社員の説明を一度動画にしておけば、新しい人が入るたびに同じ説明をする必要がなくなり、受ける側も自分のペースで何度でも見返せます。人が定着しにくい職場ほど、採用のたびに教える手間がかかることから、説明を動画で残しておく意味は大きいのではないでしょうか。

研修にかける費用は前回より増加、eラーニングで学ぶ人も多い

同じ調査によると、企業がOFF-JT(職場を離れて行う研修)にかけた費用は、従業員1人あたり平均2.0万円(令和6年度実績)でした。前回の1.5万円から0.5万円増えています。正社員向けのOFF-JT費用を今後3年で「増やす予定」と答えた企業は34.3%で、「減らす予定」の1.7%を大きく上回りました。

学ぶ側の行動も変わってきています。自己啓発に取り組んだ正社員の学習方法で最も多かったのは「eラーニング(インターネット)による学習」で、45.6%でした。動画やオンライン教材で学ぶことは、すでに当たり前になりつつあります。

研修動画ならパート・アルバイトにも研修を届けやすい

同じ調査の個人調査では、令和6年度にOFF-JTを受けた人の割合は、正社員の44.5%に対し、正社員以外は19.4%にとどまりました。受けた人の年間の平均受講時間も、正社員の22.2時間に対して、正社員以外は11.2時間と約半分です。

パートやアルバイト、契約社員は勤務する曜日や時間がばらばらで、集合研修に集まってもらうのが難しいこともあります。研修動画なら、シフトの合間やスマートフォンで見てもらえるため、雇用形態に関係なく同じ内容を伝えやすくなります。接客や店舗の運営をパート・アルバイトのスタッフが支えている企業ほど、動画にする効果は大きいと考えられます。

研修動画の動画制作費用の相場と内訳

研修動画の制作費用は、長さや本数、撮影があるかどうかで大きく変わります。ここでは、自治体が公開している発注データから実際の金額を見ていきます。

自治体の発注データで見る研修動画の制作費用

京都市は、職員向けの「仕事と介護の両立促進研修」を動画で行うため、制作会社を公募しました。動画の長さは30〜60分程度、納品はmp4形式の動画データで、上限金額は税込35万円です。年度の途中で介護に直面した職員もいつでも見られるように配信し、2026〜2028年度の3年間使う予定とされています。

横浜市は2024年11月、福祉保健システムの操作を学ぶ研修動画の制作を入札で発注しました。1本あたり最大10分程度、平均8分程度の動画を15本程度作る内容で、ナレーションや字幕、BGM、修正対応まで含めた契約金額は190万円(税抜)です。15本で割ると、1本あたり約12.7万円になります。

自治体の研修動画の制作費用事例

どちらも講義やシステム操作の解説が中心で、大がかりなロケや俳優の出演はありません。スライドやパソコン画面の映像にナレーションを付ける形であれば、1本あたり数十万円の範囲に収まることが多いと考えられます。一方、接客のロールプレイをドラマ仕立てで撮る場合などは、出演者や撮影日数が増える分、費用も上がります。

研修動画の制作費用を左右する5つの要素

見積もりの金額に差が出るのは、主に次の5つの要素です。1つ目は撮影の有無と規模です。スライドや画面録画が中心なら撮影費はかかりませんが、講師の撮影や現場でのロケが入ると、カメラマンや機材、撮影日数の分だけ費用が増えます。

2つ目は動画の長さと本数です。横浜市の例のように短い動画をシリーズで作る場合は、構成やデザインを共通にできるため、1本あたりの費用を抑えやすくなります。3つ目はナレーションと字幕で、プロのナレーターに頼むか、字幕をどこまで入れるかで作業量が変わります。

4つ目は修正回数で、確認と修正のやりとりが増えるほど制作期間も延びます。5つ目は権利処理です。BGMやイラスト、写真素材の使用料が見積もりに含まれているかも確認しておきましょう。

研修動画の制作費用を左右する5つの要素

研修動画の見積もりは「どこまで含まれているか」で比べる

見積もりを金額だけで比べると、後から追加費用がかかることがあります。横浜市の設計書では、費用を「プロジェクト管理費」と「基礎研修動画制作業務」に分け、後者にはシステム画面の実地での確認、映像編集、ナレーション・字幕の追加、修正対応が含まれていました。仕様書では、ナレーターの手配にかかる費用も制作会社の負担とされています。

企業が見積もりを取るときも、企画・台本、撮影、ナレーター、字幕、修正、納品のうちどこまでが金額に含まれているかを、制作会社ごとにそろえて比べると判断しやすくなります。

研修動画の動画制作は外注か内製か|判断のポイント

スマートフォンや画面録画ツールが広まり、研修動画は社内でも作れるようになりました。すべてを外注する必要はなく、動画の役割に合わせて使い分けるのが現実的です。

研修動画の動画制作を外注したほうがよいケース

長く使い続ける動画や、会社の考え方を伝える動画は外注に向いています。たとえば、経営者が企業理念や行動指針を語る動画、新入社員研修の基礎編、接客や安全作業のお手本を見せる動画などです。京都市の例のように3年間使う前提なら、1年あたりの費用で考えることもできます。動画の見やすさが受講者の理解に直結するため、企画の段階からプロに任せる意味は大きいでしょう。

社内で内製しやすい研修動画

一方、業務システムの操作手順や、よく変わる社内ルールの説明は、社内でも作りやすい動画です。内容の変更が多い動画を毎回外注すると、そのたびに費用と時間がかかります。パソコン画面の録画に担当者の声を付けるだけでも、十分伝わることは少なくありません。

ただ、社内で作った動画は担当者によって話し方や画面の見せ方がばらつき、見づらくなることもあります。最初に学ぶ内容を伝える、1本を数分程度に分ける、最後に要点をおさらいする、といった基本の流れを社内で決めておくと、品質をそろえやすくなります。

外注と内製を組み合わせた研修動画の運用

おすすめは、中心となる動画はプロに任せ、日々の細かな動画は社内で作る組み合わせです。最初に外注した動画のテロップやデザインのひな形を社内でも使えるようにしておけば、社内で作った動画と見た目をそろえられます。

外注か内製かを決める判断フロー

研修動画の動画制作の流れ

外注を決めたら、実際にどのような順番で制作が進むのかを押さえておきましょう。流れを知っておくと、社内で準備することや確認のタイミングが見えてきます。

企画から納品までの6つのステップ

一般的には、ヒアリング・企画、構成・台本、撮影・素材の準備、編集・ナレーション、確認・修正、納品・社内展開の6つのステップで進みます。社内の負担として見落としがちなのが、台本の内容チェック、撮影日の調整、出演する社員の確保です。

研修動画の制作の流れ

研修動画の動画制作を外注するときのポイント5選

外注で失敗しないためには、依頼する前の準備と契約内容の確認が欠かせません。自治体の仕様書には、発注時に決めておきたいことが具体的に書かれていて、企業にとっても参考になります。ここでは、押さえておきたいポイントを5つ紹介します。

1. 依頼前に研修の目的・受講者・ゴールを決めておく

京都市の研修仕様書には、研修の目的、到達目標、受講対象者、研修時間、想定する内容がまとめられています。制作会社に依頼する前に、少なくとも「誰に」「何を」「見終わった後にどうなってほしいか」を言葉にしておきましょう。提案や見積もりがより具体的になり、完成後の「思っていたものと違う」も防げます。

2. 提供する資料と社内情報の扱いを決めておく

研修動画の多くは、社内のマニュアルや業務資料をもとに作ります。横浜市の仕様書でも、市が用意するマニュアルや画像に合わせて、制作会社が構成や編集を行うことが定められていました。どの資料を誰が用意するのかを最初に決めておくと、制作が止まりにくくなります。

渡した資料の扱いも確認しておきたい点です。横浜市の仕様書は、貸し出した情報の紛失や漏えいを防ぐ管理と、業務終了後のデータの破棄・消去を制作会社に求めています。社外秘の手順や顧客情報が映り込む可能性がある場合は、秘密保持契約とあわせて確認しておくと安心です。

3. 修正回数と確認体制を契約前に決めておく

横浜市の仕様書では、動画1本あたり3回程度、全体で最大45回程度の確認・修正の機会を設けると決められていました。修正回数の上限があいまいなまま進めると、追加費用や納期の遅れにつながりやすくなります。社内で誰が最終的にOKを出すのかも、あらかじめ決めておきましょう。

4. 著作権と二次利用の扱いを契約で確認する

横浜市の仕様書では、納品された動画の著作権を市に譲り、制作会社は著作者人格権を行使しないと定めています。後から社内で編集し直したり、別の研修に使い回したりする予定があるなら、この点を契約書で確認しておくことが大切です。

また、著作権法第35条には、学校の授業であれば一定の条件のもとで他人の著作物を許可なく使える規定があります。ただし、教育関係者と権利者団体がまとめた運用指針では、「企業や団体等の研修施設」はこの規定の対象外とされています。社内研修の動画で市販の音楽や書籍の図表、他社の映像を使うときは、原則として権利者の許可が必要です。

5. 字幕を入れて音を出せない場所でも見られるようにする

横浜市の仕様書は、音声が使えない場面を考えてテロップで内容を補うことや、耳の不自由な職員にも伝わるよう字幕を付けることも求めています。工場や店舗のバックヤードなど音を出しにくい場所で見る可能性があるなら、字幕の有無も見積もりの前に伝えておきましょう。

2026年に企業が作っておきたい研修動画の種類

最後に、今のうちに研修動画にしておくと役立つテーマを3つ紹介します。法改正や人手不足など、多くの企業に共通する課題に関わるものです。

カスタマーハラスメント対策研修の動画

労働施策総合推進法の改正により、2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)を防ぐための対策が、すべての企業に義務づけられました。2026年2月に告示された厚生労働省の指針では、会社の方針を従業員に伝える方法の例として研修や講習の実施を挙げています。カスハラが起きたときの対応方法を伝える研修や、相談窓口の担当者向けの研修も例として示されています。

店舗や拠点が多い企業や、シフト勤務で全員を集めにくい職場では、集合研修だけで全員に同じ内容を伝えるのは簡単ではありません。対応の手順を動画にしておけば、新しく入ったスタッフにも同じ内容を伝えられます。指針では、接客や苦情対応の研修で従業員の対応力を高めることも望ましい取り組みとされていることから、あわせて動画にしておくと活用の幅が広がります。

新入社員研修・ビジネスマナー研修の動画

能力開発基本調査で、事業所が行ったOFF-JTの内容として最も多かったのは「新規採用者など初任層を対象とする研修」で75.7%、「ビジネスマナー等のビジネスの基礎知識」も46.6%でした。毎年同じ内容を繰り返す研修ほど、動画にしたときの効果は大きくなります。基礎は動画で事前に学んでもらい、集合研修ではロールプレイや質疑応答に時間を使う、といった組み立てもできます。

技能継承・業務マニュアルの動画

同じ調査では、技能の継承に問題があると答えた事業所は44.2%で、製造業では65.8%、建設業では59.2%にのぼります。問題点として「技術・ノウハウ等の伝承に時間がかかり円滑に進まない」を挙げた事業所は60.6%でした。その一方で、伝えるべき技能やノウハウをマニュアルなどにまとめている事業所は22.0%にとどまっています。

熟練した社員の手の動きや判断のタイミングは、文章や写真だけでは伝わりにくいものです。ベテラン社員が在籍しているうちに作業の様子を撮影しておくことが、将来の技能継承への備えになるのではないでしょうか。

2026年版・企業が今作っておきたい研修動画

研修動画の動画制作・動画マーケティングの相談は株式会社um.へ

研修動画は、作って終わりではありません。目的に合った内容で作り、社内で使われ続けることで、教える手間を減らす効果が生まれます。

株式会社um.は、横浜を拠点とするクリエイティブプロダクションです。企画・構成から撮影、編集、ナレーションや字幕の挿入までワンストップでお手伝いしています。経営者メッセージや先輩社員インタビュー、接客・作業手順の解説動画など、研修の目的やご予算に合わせてご提案します。社内で動画を作っていくためのひな形作りや、採用動画・会社紹介動画などの動画マーケティングもご相談ください。

「まずは費用感だけ知りたい」「どの研修から動画にするか相談したい」という段階でのお問い合わせも歓迎しています。研修動画の制作や動画マーケティングをご検討の際は、ぜひ株式会社um.までお気軽にお問い合わせください。


出典

1. 厚生労働省「令和7年度『能力開発基本調査』の結果を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_00233.html

2. 厚生労働省「令和7年度 能力開発基本調査 調査結果の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/11801500/001728125.pdf

3. 京都市「研修仕様書(仕事と介護の両立促進研修)」
https://www.city.kyoto.lg.jp/gyozai/cmsfiles/contents/0000348/348306/02bessi1.pdf

4. 横浜市「【入札結果掲載】福祉保健システム操作基礎研修動画作成業務委託」
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/nyusatsu/kakukukyoku/2024/itaku/kenko/fukuho20241018.html

5. 横浜市「福祉保健システム操作基礎研修動画作成業務委託 入札結果」
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/nyusatsu/kakukukyoku/2024/itaku/kenko/fukuho20241018.files/0027_20241125.pdf

6. 横浜市「福祉保健システム操作基礎研修動画作成業務委託 発注情報詳細等(仕様書)」
https://www.city.yokohama.lg.jp/business/nyusatsu/kakukukyoku/2024/itaku/kenko/fukuho20241018.files/0025_20241015.pdf

7. 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年厚生労働省告示第51号)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/001662584.pdf

8. 山口労働局「総合的ハラスメント対策の推進」
https://jsite.mhlw.go.jp/yamaguchi-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_kintou/harassment.html

9. 大阪労働局「事業主の皆さまへ(全企業が対象です)カスタマーハラスメント対策の義務化」
https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/content/contents/002448374.pdf

10. 著作物の教育利用に関する関係者フォーラム「改正著作権法第35条運用指針(令和3(2021)年度版)」
https://sartras.or.jp/wp-content/uploads/unyoshishin_20201221